消防車の音が商標登録できない理由

 

事務所のすぐそばに消防署があります。毎朝出勤するたびに日々機材のチェックや訓練に余念のない消防士の方々の姿を拝見すると感謝とともにこちらも今日も頑張ろう,と気が引き締まります。

ところで,音の商標などいわゆる「新しいタイプの商標」が登録できるようになったのが平成27年4月からですからもう5年ほどたちます。企業のブランド戦略の多様化を支援するために従来の文字や図形に加えて,音商標,動きの商標,色彩の身からなる商標などを登録可能にしたのが「新しいタイプの商標」です。調べてみると,すでに登録になっている音の商標はJ-PlatPatで検索すると本日現在で356件でした。有名な製薬会社や食品会社,保険会社などのCMでおなじみのメロディーが並んでいます。最初に登録されたのは特許庁のホームページによると大幸薬品株式会社の「正露丸」のCMで聴くラッパの音,インテル・コーポレーション,BMW社のCMで使用されている音でした。

制度がスタートしてだいぶ経つ「音の商標」が急に気になったのは,毎日出動している救急車・消防車のサイレンの音を聞いていてふと「音の商標で登録できない音だと思われるが,出願したら拒絶理由はなんだったかな」と気になったことでした。

調べてみるとちゃんと不登録事由に入っていました。商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するそうです。この7号は,「その構成自体がきょう激,卑わい,差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字,図形,記号,立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合,音である場合並びに商標の構成自体がそうでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれるものとする」ということです。

ちなみに今年開催予定の東京オリンピックですが「オリンピック」「五輪マーク」などは商標法4条1項6号の「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関,公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標」に該当するために登録はできません。

商標は事業者が自己の取り扱う商品・サービスを他人のものと区別するために使用するマークですので,公益的な商標を独占できないのは当然のことですね。