特許法等の一部を改正する法律施行日

令和3年特許法改正の施行日が決まりました。令和4年4月1日施行ですが,一部は今年10月1日から施行されました。

令和3年改正では,(1)新型コロナウイルスの感染拡大に対応したデジタル化の手続きの整備(2)デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直し(3)知的財産制度の基盤の強化が図られました。

具体的には,以下のような内容です。

(1)型コロナウイルスの感染拡大に対応したデジタル化の手続きの整備では①審判の口頭審理等について,審判庁の判断で,当事者等が審判廷に出張せずWEB会議システムを利用して手続きを行うことができる②特許料の支払い方法について印紙予納を廃止し,クレジットカード支払等を可能にする③意匠・商標の国際出願の登録査定通知等の簡素化④感染症拡大や災害等による特許料の納付期間経過の救済措置が定められました。

(2)デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直しでは,①増大する個人使用目的の模倣品輸入に対応し,海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為を商標権等の侵害として位置付ける,②特許権の訂正等における通常実施権者の承諾を不要とする,③特許権等が手続期間徒過により消滅した場合に,権利を回復できる要件を緩和する。

(3)知的財産制度の基盤の強化では,①特許権侵害訴訟において,裁判所が広く第三者から意見を募集できる制度を導入し,弁理士が当該制度における相談に応じることを可能とする,②審査負担増大や手続のデジタル化に対応し,収支バランスの確保を図るべく特許料等の料金体系を見直す,③農林水産関連の知的財産権に関する相談等の業務について,弁理士を名乗って行うことができる業務として追加する。

弁理士にとってはどれも把握すべき改正点ですが,特許や商標の出願をあまりしていない企業にとっても影響があるのが,「増大する個人使用目的の模倣品輸入に対応し,海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為を商標権等の侵害として位置付ける」点だと思われます。「この法律において,輸入する行為には,外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が含まれるものとする」というのが改正条文です。

海外事業者から直接個人に模倣品が販売される例が増えております。この場合,商標権者が輸入者である個人を訴えようとしても,個人の使用目的で模倣品を輸入する行為は「業として」の要件を欠いてしまうため商標権侵害や意匠権侵害が成立しません。では,海外事業者を訴えようとしても日本の商標法や意匠法はあくまで日本国内でのみその効果を及ぼすことができるものになり取り締まりが困難な状況にありました。そんな中実際には,国内の輸入業者による「業として」の輸入であるのに,個人使用目的の輸入を仮装している例も生じていました。

そこで,改正では海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為について,日本における意匠権・商標権の侵害として位置づけることになり,意匠権者や商標権者は個人使用目的での輸入を税関で差し止めることができるようになりました。

海外からの模倣品によりこれまで被害を受けてきた事業者によっては,朗報です。