育成者権管理機関
農産物の登録品種の海外への流出などを防ぐため農林水産省が設置した有識者の検討会は7月はじめ,流出防止などへ向けて,「専任的に知的財産権の管理,国内外での侵害の監視・対応,海外ライセンスを行うことができる育成者権管理機関を設置すべき」との中間論点整理を公表しました
新品種の海外流出が問題となっていますが,種苗法改正により,品種開発をした育成者権者が登録品種の海外持ち出し制限や自家増殖の許諾性を活用することで,流出防止に取り組みやすくなったと言われています。
ただ,改正に実効性を持たせるには登録品種の管理を行うため生産者との間での契約締結が必要となるほか,海外での侵害のウオッチングも必要になり,地方自治体はもちろん,個人の育種家の対応は実際には困難です。
かかる現状から,育成者権の信託や利用権の設定を受け専任的に知財を管理する育成者管理機関の設置を検討しているものです。
国が主導で管理機関を設置することは,育成者権が私的な権利であることなど課題もあります。
農水省の試算では,2016年に流出したシャインマスカットは,かりに育成者権が保護されていれば,中国の市場出荷額(1㎏340円)と一般的な許諾料(出荷額の3%)から,年間100億円以上がロイヤルティとして日本に入ってくるそうです。
日本の優良な農産物を守るため実効性のある組織になることを期待します。